いのちをつなぎ　いのちを育み　地域と共に歩む

　2025年4月1日現在で北海道内の研究機関等に所属し、生命科学の進歩発展に顕著な功績をあげた研究者が対象です。

横田 伸一（ヨコタ シンイチ）氏 ( 62歳 )

札幌医科大学医学部 教授

ウイルス,細菌による宿主応答の攪乱作用に立脚した感染症治療、予防戦略の探索

　横田伸一氏は、ウイルスや細菌の感染予防につながる「ウイルス感染による自然免疫応答の攪乱機構の解明」および「細菌表面の化学構造や生物活性、抗原性」に関する基礎研究を基盤に、臨床への応用戦略を見据えた学際的な研究において優れた成果をあげてきた。それらは、190編の原著論文として報告されており、同氏の優れた研究業績として評価できる。特に、ウイルス感染の研究では、宿主免疫応答のネガティブフィードバック機構を感染ウイルスが立ち上げることで自らの複製を促進させる新しい概念を提唱するとともに、新規抗ウイルス薬やワクチン開発のための有用な知見を見出している。現在は、乳幼児や高齢者で問題となっている呼吸器系ウイルスの宿主免疫応答と増殖制御に関わる研究、並びに抗菌薬の抗ウイルス薬としての応用に着眼したドラッグリポジショニングへの研究展開を進めており、一貫してウイルスと宿主免疫のせめぎあいをテーマにした精力的な研究を進めている。　また、ピロリ菌の表層物質であるリポ多糖の化学的構造解析を進め、２つのエピトープの存在を見出し、低抗原性のリポ多糖がToll様受容体の発現亢進に加え、宿主細胞の増殖シグナルを活性化することで発がん因子の一つになりうる機序を見出している。このような独創的な視点からの研究成果は、小林六造記念ヘリコバクター賞として高く評価されている。
　さらに、肺炎球菌やインフルエンザ菌の北海道での臨床分離株を用いて薬剤耐性に関する疫学を進めるとともに、耐性機序の解析を組み合わせることにより、臨床現場における抗菌薬の適正使用への指針を提言するなど地域医療への情報発信にも取り組んでいる。特筆すべき活動としては、コロナ禍における市民、コメディカルへのメディアを通じた情報発信や行政による感染症対策動画の監修、さらには道内各地の大学や看護学校、医療専門学校で微生物学や感染症学の教育活動を長年にわたり行っており、医療現場はもとより社会全体に向けた感染症対策の啓蒙と推進、人材育成に多大なる尽力を注いできた。 このような微生物専門家としての横田氏の活動は、学術研究にとどまらず道民福祉の向上に寄与するものとして高く評価できるものであり、秋山財団賞の受賞にふさわしいと判断する。

【代表的な学術論文】
　1.　Yokota S, Yokosawa N, Okabayashi T, Suzutani T, Fujii N. Induction of suppressor of cytokine signaling-3 by herpes simplex virus type 1 confers efficient viral replication. Virology 2005;338(１)：173-181.
　2.　Yokota S, Okabayashi T, Yokosawa N, Fujii N. Measles virus P protein suppresses Toll-like receptor signal through up-regulation of ubiquitin-modifying enzyme A20. FASEB J 2008;22(1):74-83
　3.　Jinushi M, Yamamoto S, Ogasawara N, Nagano H, Hashimoto S, Tsutsumi H, Himi T, Yokota S. Measles virus genotype D wild strains suppress interferon-stimulated gene expression more potently than laboratory strains in SiHa cells. Viral Immunol 2016;29(5) 296-306
　4.　Yokota S, Okabayashi T, Rehli M, Fujii N, Amano K. Helicobacter pylori ｌipopolysaccharides upregulate Toll-like receptor 4 expression and proliferation of gastric epithelial cells via the MEK1/2-ERK1/2 mitogen-activated protein kinase pathway. Infect Immun 2010;78(1) 468-476
　5.　Shiraishi T, Matsuzaki C, Chiou T-Y, Kumeta H, Kawada M, Yamamoto K, Takahashi T, Yokota S. Lipoteichoic acid composed of poly-glycerolphosphate containing L-lysine and involved in immunoglobulin A-inducing activity in Apilactobacillus genus. Int J Bioｌ Macromol 2024;271(1):132540.
　

　各分野での功績があり、一層の飛躍と進化を求め続ける女性で、北海道に縁（ゆかり）のある方が対象です。

七戸　千絵（シチノヘ　チエ）氏 ( 56歳 )

株式会社　The St Monica 代表取締役

　七戸千絵氏は、薬剤師としての知見を軸に、ご自身の出産や子育て等の過程で抱いた問題意識、或いは使命感を、いわば昇華した精力的な活動を続けています。また、その活動の中核をなす企業体であるThe St Monica（セントモニカ）。個人事業から始まり、現在は株式会社として北海道産原料を使用した赤ちゃんから高齢者まで安心安全に使える商品開発・販売を行い、札幌市経済局「札幌スタイル」の認証を得る等、社会的にも認知をされ、経済活動としても高い評価を得ています。
　さらに、その企業経営においては「女性特有の経済格差や女性に責務が集中しやすい出産、子育ての選択や、介護をしながらも離脱しない職場の勤務体系の創設」の理念をもとに、自らが女性経営者として活躍されることは勿論、参画するメンバーの女性にとってもロールモデルとして活躍のしやすい場を提供されています。
　近年は産学官についての講演や札幌市の官民対話事業「meet For the Next2023」で秋元市長と対話を行い、また、北海道で育つ花や葉など自然栽培・無農薬・保存料なしへのこだわりを持つ中で、大学との共同研究や企業やイベントとのコラボ、プロジェクトによる企画・開発・コンサルティングも行っています。
　北海道を心から愛し、強い使命感と責任感を持って広く社会に寄与・貢献していた秋山喜代氏と同様に、七戸千絵氏も、薬剤師の知識を用いた地場産原料開発と世代を超えたコミュニティー形成をもとに、これからも新しい商品の開発、事業展開、社会貢献活動を模索し続け、北海道、日本人らしい優しさと強さを兼ね合わせたモノづくりと場所づくりの実践が期待されます。輝く社会づくりに向けて地方からチャレンジしていく女性のロールモデルを顕彰するという『秋山喜代賞』の理念に相応しい方であると思います。

　北海道内の各種の研究機関等に所属し、生命科学のうち自然科学分野の基礎的研究で優れた研究者であり、年齢は問いませんが、若手研究者を期待、また自立的或いは共同で研究を行う研究者を対象とします。

北海道大学大学院薬学研究院 教授
長友 優典 (ナガトモ マサノリ)

高歪み反応性化学種を用いた革新的Ｃ(sp³)－C(sp²)ハイブリッド天然物合成

北海道大学大学院医学研究院 特任助教
遠藤 努 (エンドウ ツトム)

脊柱後縦靭帯骨化症に特異的な細胞外小胞体およびバイオマーカー探索

北海道大学大学院歯学研究院 教授
黒嶋 伸一郎 (クロシマ シンイチロウ)

PTH製剤の皮下投与は国民を脅かすインプラント周囲MRONJを打破できるか

帯広畜産大学生命・食料科学研究部門 准教授
橋本 直人 (ハシモト ナオト)

食品の未利用資源の活用に資する食品成分を用いたマウスの脂肪肝改善作用の検討

北海道大学北海道大学病院 助教
広瀬 貴行 (ヒロセ タカユキ)

移植腎組織内の免疫細胞の解析による拒絶反応のメカニズム解明

北海道大学大学院歯学研究院 准教授
長谷川 智香 (ハセガワ トモカ)

胃切除後骨粗鬆症の発症メカニズム解明と新規治療法開発

室蘭工業大学大学院工学研究科 准教授
矢島 由佳 (ヤジマ ユカ)

好雪性変形菌に細胞内寄生する新規微生物のゲノム解析手法確立

旭川医科大学救急医学講座 講師
川口 哲 (カワグチ サトシ)

敗血症性心筋症における心筋β３アドレナリン受容体の脂肪酸代謝制御機構の解明

北海道大学大学院保健科学研究院 講師
益田 紗季子 (マスダ サキコ)

唾液のNETs誘導メカニズムの解明

慶友会吉田病院臨床研究センター 副院長
吉田 遼平 (ヨシダ リョウヘイ)

Beyond PDの壁を超えるフレア現象を予測するバイオマーカー研究

北海学園大学工学部 教授
早矢仕 有子 (ハヤシ ユウコ)

絶滅危惧種シマフクロウ保全における市民参加型モニタリング手法の構築

室蘭工業大学大学院工学研究科 助教
鹿毛 あずさ (カゲ アズサ)

人工衛星による宇宙実験に向けた微生物長期培養モニタリングシステムの開発

森林総合研究所 北海道支所 研究員
菅井 徹人 (スガイ テツト)

百年にわたる針葉樹トドマツの気候変動応答を多地点の年輪成長と気象情報から紐解く

旭川医科大学医学部 准教授
上田 潤 (ウエダ ジュン)

ヒストンH3tを含有した精巣特異的ヌクレオソーム及びクロマチン構造と機能の解明

北海道大学大学院歯学研究院 助教
平田 恵理 (ヒラタ エリ)

光応答性ナノ複合体のインプラント周囲炎治療法への応用と生体安全性評価

酪農学園大学獣医学群 准教授
大道寺 智 (ダイドウジ トモ)

動物およびヒトにおけるダニ媒介性感染症の研究と媒介ダニの生息域調査

北海道大学大学院理学研究院 准教授
荻原 克益 (オギワラ カツエキ)

メダカ排卵と卵成熟のタイミングは時計遺伝子により決定されるか？

北見工業大学工学部 准教授
近藤 寛子 (コンドウ ヒロコ)

低温環境に適応したヘムタンパク質の構造特性の解明

北海道大学大学院医学研究院 教授
谷口 浩二 (タニグチ コウジ)

がんの炎症シグナルを標的とした新規修飾抗体療法の開発

　北海道内の各種の研究機関等に所属し、生命科学のうち自然科学分野の基礎的研究で優れた研究者であり、申込時の年齢が40歳未満で、また自立的研究を行う研究者を対象とします。

酪農学園大学獣医学群 講師
石﨑 隆弘 (イシザキ タカヒロ)

北海道内牧野におけるウシピロプラズマ症の分布とウシ品種間における病態差異の解明

北海道大学北海道大学病院 助教
村松 憲 (ムラマツ ケン)

増殖性天疱瘡における表皮増殖機構の解明

北海道大学大学院薬学研究院 助教
城島 啓佑 (ジョウジマ ケイスケ)

生体膜のパッキングを制御するスフィンガジエンの脳における役割の解明

北海道科学大学保健医療学部 助教
松田 涼 (マツダ リョウ)

高齢脳卒中患者に適応した退院時FIM予測モデル構築とフィードバック支援アプリ開発

北海道大学大学院先端生命科学研究院 助教
石原 すみれ (イシハラ スミレ)

がん細胞集団における染色体倍加を介した低酸素順応機構の解明

北海道大学大学院獣医学研究院 博士研究員
Kwak Mackenzie (クァク マッケンジー)

北海道におけるダニおよびノミ媒介性感染症の伝播に関する複雑な生態学的要因の解明

北海道立総合研究機構 研究職員
橋本 朝陽 (ハシモト アサヒ)

崩壊地斜面における面状土壌侵食が植生回復に及ぼす影響の解明

札幌医科大学医学部附属免疫学研究所 助教
池上 一平 (イケガミ イッペイ)

IL-9が介在する自然免疫と適応免疫の新たな連携機構に基づくアレルギー病態の研究

北海道大学大学院歯学研究院 助教
工藤 葉子 (クドウ ヨウコ)

慢性疼痛と発達障害の併存メカニズムの全脳イメージング解析

北海道大学北海道大学病院 助教
岩原 直也 (イワハラ ナオヤ)

腎移植におけるドナー特異的低反応の人為的誘導法の開発

北海道大学大学院先端生命科学研究院 助教
横井 康広 (ヨコイ ヤスヒロ)

エクソソームの糖鎖修飾に着目した新規膵がんバイオマーカーの探索

北海道大学ワクチン研究開発拠点 特任講師
齊藤 慎二 (サイトウ シンジ)

H5亜型鳥インフルエンザウイルスに対するWHO承認ワクチン株の特性解析

札幌医科大学医学部 兼任助教
酒井 渉 (サカイ ワタル)

新生児重症心不全の治療を目的とした超小型IABPの開発

北海道大学大学院獣医学研究院 助教
難波 貴志 (ナンバ タカシ)

尿細管のつなぎ目をみる新たな腎臓学－組織障害の起点をもとめて－

酪農学園大学獣医学群 講師
田村 昌大 (タムラ マサヒロ)

腸内細菌叢の破綻を介した犬の肝性脳症の新規病態メカニズムの解明

札幌東徳洲会病院医学研究所 研究員
林 隆介 (ハヤシ リュウスケ)

好酸球性副鼻腔炎におけるアセチルコリンの機能解析から創出する新規治療戦略

北海道大学大学院歯学研究院 学術研究員
武藤 麻未 (ムトウ マミ)

アモルファス合金を用いたデンタルインプラントの開発

　「生命科学（いのち）」をテーマとし、北海道においてさまざまな領域で直面する社会的課題を解決するために取り組む“つなぐ”プロジェクトや起業を対象とします。多様なメンバーで「プラットホーム」を形成し分野横断的な「ネットワーク」を構築することを必須条件とし、活動の質的なステップアップ、担い手としての自立を目指すプロジェクトや起業を支援します。原則として3年間の継続助成です。

　よいち未来共創プロジェクト～エネルギーの自助と共助で創る安心

　大倉 準 （オオクラ ジュン）bokashi代表/サニーサイドファーム(農家)

　エネルギーの自給自足による自助と住民の共助により地域のレジリエンスを向上させるとともに、情報弱者を含めた情報共有や組織連携の仕組みを構築し、災害にも強い地域モデルを提案する。

　中学生・高校生・大学生の「探究できるアンケートフォーム」プロジェクト

　髙橋 陸斗 （タカハシ リクト）北海道大学大学院教育学院 博士課程院生

　中学生、高校生、大学生を対象とした、手軽にアンケートを実施・結果の統計分析ができるツールを開発し、探究授業や調査研究を通したデータサイエンスの基礎を学べるアプリケーションの開発を行う。

　リジェネラティブな「にわとり」ネットワークの構築

　渋谷 崇史 （シブヤ タカフミ）鶏中心設計/marushibu architects 代表

　「にわとり」という身近な存在を起点に、多世代・多様なバックグラウンドのメンバーと共に、自然と生命のつながりを観察し、知見と体験を共有・交換し、未来につながる多種共生的な在り方を探り実践するプロジェクトです。

　「生命科学（いのち）」をテーマとし、北海道において、さまざまな領域で直面する社会的課題を解決するために取り組む“つなぐ”プロジェクトや起業を対象とします。多様なメンバーで「プラットホーム」を形成し分野横断的な「ネットワーク」を構築することを必須条件とし、若い力で意欲的にチャレンジする学生・社会人中心の次世代プロジェクトや起業を支援します。1年間の単年助成および、2年または3年間の継続助成。代表者・責任者およびプラットホームメンバーの過半数が16～30歳までを対象とします。

　北の高校生会議2.0

　武田 祐貴 （タケダ ユウキ） 北海道札幌工業高等学校

　高校生主体で社会課題を議論し合う合宿型イベントを再始動し、新たな連携と学びの機会を創出。道内外の高校生同士が対話を深め、地域社会の未来を提案する。

　地域と若者が共創する持続可能なネットワーク形成プロジェクト

　下沢 杏奈 （シモザワ アンナ） 一般社団法人いとのこ

　地域の若者と企業・起業家が連携し、共創の場を創出することで、地域に若者が活躍できる持続可能なネットワークの形成を目指す。

1件

3,000,000円

1件

500,000円

19件

22,800,000円

17件

10,200,000円

3件

3,000,000円

2件

1,000,000円

6件

5,280,000円

合　　　　計

49件

45,780,000円

100万円

100万円

98万円

80万円

100万円

50万円