| 民が担う社会貢献 |
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2007年(平成19年)8月29日(水嘩日) 秋山 孝二
今年の「全米財団宴会年次総会」は、「北西フイランソロピー協議会三十周年記念フォーラム」との共催、という節目の企画でもあり、私は思い切って米国シアトルでの三日間(四月二十九−五月一日)に初めて登録申し込みをした。
シアトル市は、ついこの間までは航空機産業のボーイング社の本拠地で有名だったが、最近ではマイクロソフト、スターバックスコーヒー、アマゾンの本拠地としてむしろ人々に知られている。主催者の発表で、今回世界から二千人の登録があり、うち初参加者は四百人で、全体会議の様子では、三分の二は女性の参加者だった。
全体テーマは、「社会貞献と現代の挑戦」で、4つの視点、(1)飢餓、(2)公衆衛生、(3)環境保全、(4)大規模災害、を軸にした意見交換だった。連日数多くの分科会、フィールドワーク、そして特別講演として、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同代表のメリンダ・ゲイツ氏、シアトル市長のグレッグ・ニクルス氏、他の盛り沢山のプログラムで、それぞれの詳細はホームページから視聴できる。
まず、フォーラム全体を通じて「京都プロトコル(議定書)」という言葉が、数十回それぞれの演者の口から出てきており、地球温暖化防止京都会議で京都プロトコルが採択された一九九七年は歴史的転換点という気がした。
会場の雰囲気はバイタリティーに富んで、取り組んでいる課題は重たいものばかりにもかかわらず、出席者の顔には笑顔が溢れていた。全世界からの参加を実感したのは、一日日の昼食時のこと、オープーニングの自由席でたまたま座った左隣は、ニカラグアからの子供の人権擁護活動の財団代表の女性、南アフリカ共和国からの女性の雇用・人権意識促進団体の代表、右隣は、サンフランシスコ市からのホームレス救済活動団体の女性だった。
特別講演は二人のメッセージが心に残っている。メリンダ・ゲイツ氏は、マイクロソフト会長ビル・ゲイツ氏の妻で、基本財産三兆円の巨大財団の共同代表である。投資家のウォーレン・パフェット氏がこの財団に対して、更に三兆円を上回る寄付を行う発表をしたと新聞記事で読んだ。
彼女は、今回の講演の中で、「この十年の活動で、常にこれで良いのか、を問う連続であった。現代において、企業はグローバル競争の中で収益を上げ、株主還元を最優先にしていかなければならなく、一方、世界各国の政府では、慢性的財政難と政策の誤りにより、構造的にも思うような社会貞献活動の実績は上がっていないのが現実である。今日ここに集まっている非営利法人こそが、本来の第三セクターとして高い理念を掲げて、これからもこの分野の担い手となる時代に違いない」と語り、会場の大きな拍手を浴びた。
もう一人、シアトル市長のグレッグ・ニクルス氏は、分科会のパネラーとして、また地元市長としての講演でも勢いのある話をされた。
京都プロトコルを批准しないブッシュユ政権を痛烈に枇判し、現在全米で四百を超える市長が連合を創り、自立して京都プロトコルの基準目標をクリアすべく活動中であることを報告した。さらに市レベルでは、独自の草の根のCO2削減への取り組み、今後一層貴重になるであろう「水資源」の確保を冬の雪を活用しての取り組み等、具体的であり、説得力があった。
全体を通して、多様な活動を継続的に行っている民間非営利法人関係者の躍動感に圧倒されると同時に、財政的にも自立して、批判を恐れず、当事者責任を果たし切ろうとする勇気と意欲を強く感じた。また、グローバル競争時代にこそ、地域に根付いた人々の社会貞献活動の台頭が望まれる、との確信が伝わってきた。 帰りの飛行機の中で、私は、今理事長を務める財団の二十一年前の設立時を思い出した。この財団は、明治に創業した企業の百周年を前にしてて、四代目社長が私財を基本財産に投じて、創業当初の経営理念「奉仕の精神」の新たな具現化としてスタートし、その後数多くの民間企業・個人から寄付を頂いて成長してきた北海道地域・民間・助成財団である。
設立時は巷では、「お金持ち」、「売名行為」等、出損者の地域への奉仕・責献の志を理解するどころか、むしろ的外れの、誤解による批判的な評論が多く、設立に携わった私には甚だ不本意であり、公的補助金頼みの財団が殊の外多い北海道での「財団法人」のイメージを知らされる思いだった。
昨年、公益法人改革三法が公布され、日本でもやっと民間が担う本来の公共活動への評価、寄付金への理解が深まる兆しをみせている。私は、今後の展開に期待しつつ、北のいのちとともに、愚直に自主・自立・持続可能な活動を続けていきたい。
(あきやま・こうじ 財団法人秋山記念生命科学振興財団理事長) |